日本企業が低成長を脱却し”稼ぐ力”を取り戻すには賃上げしかない(デービッド・アトキンソン)

先日の読売新聞の朝刊に「低成長脱却への一手」ということで特集記事が組まれていました。

昭和の高度経済成長後、平成時代の日本経済はずっと低空飛行を続けています。

この「失われた30年」とされる時代を経て、次の10年、20年で日本経済が浮上するためには何をすればいいのか?というテーマで、識者にインタビューしたものが掲載されていました。

その中でも特に気になったデービッド・アトキンソンの意見についてご紹介します。

デービッド・アトキンソンとは?

そもそもデービッド・アトキンソンって誰?と思いましたか?私は思いました。

新聞記事によればこの人↓みたいです。

 

白髪のオッサンですね。

肩書にもあるように、現在は小西美術工藝社の社長をしています。

 

経済のプロかと思いきや、まさかの美術品会社の社長。

肩書を見た瞬間「中小企業の社長が経済のことを語ってるとかウケるw」とか思ってしまいました。

だってこれってサッカー選手がプロ野球の解説をしているようなもんじゃないですか。

読売新聞もなんでこんな人にインタビューしたんだよ…と思ったのですが、よくよく調べてみるとどうやら違うみたいですね。ウィキペディアにはこうあります。

アンダーセン・コンサルティングアクセンチュアの前身)やソロモン・ブラザーズに勤務し、1990年頃に渡日。1992年にゴールドマン・サックスに移ってアナリストとして活動し、バブル崩壊後の日本の銀行に眠る巨額の不良債権を指摘。ほどなく不良債権問題が顕在化し、その名を高める。2006年にパートナーに昇任した後、2007年に退社した。

 

どこからどう見ても金融界のプロでございました。

マスター・キートン(アニメ版)の第2話みたいな感じになり、「肩書で判断してごめんなさい」って感じです。

 

日本経済が発展するカギは『労働者の賃金上昇』

そんなデービッド・アトキンソン氏の主張は、

「10年後に日本が稼ぐ力を取り戻すためには労働者の賃金上昇が不可欠。そしてそのためには、国が強制的に賃金上昇を促すことが必要だ。」

というものです。

 

アトキンソン氏によれば現在の日本の社会保障給付費は年間120兆円で、これを15~64歳の労働生産人口で割ると、労働時間1時間あたりの負担額は1人につき820円になるそうです。

つまり日本の社会保障を維持するために、現在は全労働者が平均して時給820円分の対価を支払っているということです。

 

すでに少子高齢化が急速に進行している日本では今後、労働生産人口が減るとともに社会保障費は増えていきます。

その結果、2060年ごろには社会保障給付費を賄おうとすると、労働者1人当たりの負担額は時給換算で2100円にまで増えるそうです。

 

これは国民年金の納付額でイメージするとわかりやすいかと思います。

むかしは国民年金制度を維持するために、若い世代は月額5,000円程度を支払えばよかったです。

ところが現在では

  • 年金を受け取る人の数が増え
  • 年金を支払う人の数が減った

ため、月額基本料は1万7,000円近くまで増額されています。

現役世代の一人当たりの負担額が増えているわけです。

これと同じことが社会全体で起こります。

 

賃上げすれば生産性が向上する

人口が減少する中で税収を増やし社会保障費を賄うためには、賃金を上げるしかありません。

しかし日本の経営者の多くは「いかに賃金を増やすか」ではなく、「いかに賃金を低く抑えるか」しか考えていません。

そのため、税収アップのためにも強制的に賃金を上げる仕組み(法制度など)が必要だとアトキンソン氏は主張しています。

 

アトキンソン氏によれば、社員(労働者)の賃金を強制的に上昇させると社長の取り分(役員報酬)が減ります。

  • 社員の強制的な賃金上昇=社長の給料が減る

という方程式です。

役員報酬が減れば社長が危機感を持って会社経営するようになるため、IT化やロボット化を進めるなど生産性を向上させるための取り組みが活発になります。

IT化やロボット化が進めば社員1人あたりの生産性も向上するため、いずれは労働者1人当たりの社会保障給付費の負担額(時給換算で2100円)も賄えるようになる!という作戦です。

 

賃上げすると”無駄”がなくなる

賃上げをすることで”無駄”も減ります。

会社員をしたことがある方なら「何の意思決定もできないまま時間だけが過ぎていく無駄な会議」を一度は経験したことがあると思います。

強制的に賃上げすれば「こんな無駄なことのために給料を払っていられない」となるため、無駄な会議がなくなります。

 

また、”無駄な会社”も減ります。

現在の日本には「本来は倒産していなければおかしいはずなのに、労働者を酷使したり国から補助金をだまし取ったりすることで存続している会社(ゾンビ企業)」が存在しています。

ブラック企業がその代表格であり、うつ病や自殺はそんなゾンビ企業を放置してきた代償です。

 

強制的な賃上げが進めば、給料を払えなくなるためゾンビ企業もさすがに倒産せざるをえなくなります。

その結果、ホワイト企業だけが存続し、現在弱小メーカーがやっている価格競争のような「血で血を洗う消耗戦」もなくせます。

これは以前書いた日本株悲観論者への反論ニトリ会長の予言にもつながると思い、私も期待しています。

www.moneymics.com

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日本企業が低成長を脱却する方法(アトキンソン版)のまとめと問題点

ここまでの流れをまとめると、

  1. 生産年齢人口が減るため、社会保障費を維持するためには労働者1人あたりの負担額が増える
  2. 増加した負担額を賄うためには、労働者1人あたりからの税収を増やす必要がある
  3. そのためには「強制的な賃上げ」が有効
  4. 強制的に賃上げすることでIT化やロボット化が進み(生産性向上)、ブラック企業は給料が払えずに倒産するのであらゆる”無駄”がなくなる
  5. 一社あたりの生産性は向上し、会社同士の過当競争もなくなるので日本経済は低成長から脱却できる

となります。

 

アトキンソン氏の主張に問題点があるとすれば、社会保障の維持」が前提条件になっていることです。

「現在と同等の社会保障を将来も維持すること」を諦めれば、強制的な賃上げは必要なくなります。

たとえば高齢者の医療費の自己負担額を増やせば、税金の投入額が減らせるので現役世代の社会保障費負担額が減らせます。

 

しかしこの場合はゾンビ企業ブラック企業は相変わらず存続することになり、うつ病になる人や自殺者も減らず、ホワイト企業だけが存続できる環境にはならないため日本経済も低成長のままです。

 

そもそも人口が減っていくときに経済成長しようとすること自体が無理なお題なのですが、もしも仮に実現しようとするのであれば、アトキンソン氏が主張するように強制的な賃上げが不可欠ではないかと感じました。

 

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